防災リュックは何を基準に選べばいいのか
結論から言うと、容量・背負う人・置き場所の三つで決まります。デザインや値段から入ると、たいてい失敗します。
理由は単純です。防災リュックは「持ち出して、歩いて、避難所で使う」道具です。見た目が気に入っても、重すぎて背負えなければ意味がありません。容量が大きすぎても、玄関に置き場所がなければ結局クローゼットの奥にしまい込むことになります。三つの条件を先に固めてから、色や素材を選ぶ順番が正解です。
たとえば身長155センチの女性が、家族用にと大容量35リットルのリュックを選んだとします。中身を詰めると7キロを超え、実際に背負って歩いてみると10分で肩が痛くなった、というケースはよくあります。逆算すれば、この人に必要なのは20リットル前後の軽量モデルだったはずです。
例外もあります。車で避難する前提の地域や、自宅が高台にあって徒歩避難の距離が短い場合は、多少重くても容量を優先していい場合があります。ここは住んでいる場所の避難計画によって変わるので、一律に「軽いものが正解」とは言い切れません。
容量は何リットルが目安になるのか
大人ひとりなら20〜30リットルが目安です。子どもや高齢者は10〜15リットル程度に抑えるのが無難です。
容量を決める際は、まず「何日分の水と食料を入れるか」から逆算します。一般的に言われる備蓄の目安は3日分ですが、リュック一つにすべてを詰め込む必要はありません。自宅の備蓄と、持ち出し用のリュックは役割が違います。リュックには「避難所に着くまでと、着いてから半日〜1日をしのぐ分」だけ入れれば十分という考え方もあります。
具体的に中身を並べてみます。500ミリリットルの水を2本、レトルト食品を2食分、モバイルバッテリー、着替え一式、簡易トイレ、懐中電灯。これだけでもう2〜3キロになります。ここに防寒具や常備薬を足すと、20リットルのリュックはほぼ満杯です。30リットルを選ぶ人は、家族の分をまとめて背負う想定か、防寒具を厚めに入れたい人です。
迷いやすいのは「大は小を兼ねる」という発想です。容量に余裕があると、つい不要なものまで詰めてしまいがちです。結果として重量オーバーになり、いざというとき背負えない。容量は「入る量」ではなく「背負って歩ける量」で決めるべきです。
背負う人によって選び方は変わるのか
変わります。同じ家族でも、大人と子どもでは適したリュックがまったく違います。
体力差がある以上、当然のことです。目安として、リュックの総重量は体重の10〜15%程度に収めるのが負担が少ないと言われています。体重50キロの大人なら5〜7キロ、体重20キロの子どもなら2〜3キロが上限のイメージです。この数字を超えると、短時間でも肩や腰への負担が大きくなり、長距離の避難では歩くこと自体が難しくなります。
場面を想像してみてください。小学校低学年の子どもに大人用の30リットルリュックを持たせ、水と食料をぎっしり詰めたとします。見た目は頼もしいですが、実際に背負わせると数分でよろけてしまう。これでは避難の足手まといになりかねません。子ども用には、水と着替えとホイッスル程度に絞った軽量タイプが向いています。
高齢者の場合も同様です。腰に負担がかかりにくいよう、背面パッドがしっかりしたモデルを選ぶ、あるいはリュックではなくキャリー付きのタイプを検討する家庭もあります。ここは体力や持病の有無で判断が分かれるところで、一つの正解があるわけではありません。家族それぞれの体力を基準に、個別にリュックを用意する発想が必要です。
中身は最初からセットのものを選ぶべきか、自分で詰めるべきか
初めて用意する人には市販のセット品をおすすめします。ただし、そのまま使い続けるのは避けたほうがいいでしょう。
市販のセットは、多くの人に必要とされる基本装備を一通り揃えてくれています。何を入れればいいか分からない状態から始めるより、まずセットを土台にして、そこから家族構成に合わせて中身を足し引きする方が効率的です。ゼロから一つずつ買い集めると、抜け漏れが出やすく、時間もかかります。
ある家庭では、市販の防災セットを購入した後、そのまま中身を見ずに3年間放置していたそうです。いざ確認してみると、乾電池は液漏れし、非常食の賞味期限は1年以上前に切れていました。セットはあくまでスタート地点であって、ゴールではありません。定期的に中身を見直す前提で使う必要があります。
迷いやすいのは「セットに何を足すか」です。持病がある人は常備薬、乳幼児がいる家庭は粉ミルクやおむつ、メガネがないと生活できない人は予備のメガネ。こうした個別事情は市販セットには入っていません。ここを補わないと、セットを買っただけで安心してしまう落とし穴にはまります。
どこに置くかで選ぶリュックは変わるのか
変わります。玄関に置くか、寝室に置くかで、適したサイズと形状が違ってきます。
これは動線の問題です。地震はいつ起きるか分かりません。夜間に発生した場合、真っ暗な中で寝室からリュックを取り出して玄関まで移動する必要があります。玄関に置いてあれば、この移動が省けます。一方で、マンションの上層階に住んでいて玄関までの廊下が長い場合や、そもそも玄関に置くスペースがない家庭では、寝室や廊下収納に置かざるを得ないこともあります。
具体的には、玄関の下駄箱の上や土間の隅に置けるスペースがあるかを確認します。奥行き30センチ程度の隙間に置くなら、細身で縦長のリュックが適しています。逆に収納スペースに余裕があるなら、多少かさばっても収納力優先のモデルを選べます。
ここは迷うところですが、置き場所が決まらないまま先にリュックを買ってしまうと、家に置く場所がなくて結局クローゼットの奥に押し込む羽目になります。これでは非常時にすぐ持ち出せません。置き場所を先に確保してから、そのスペースに収まるサイズのリュックを選ぶ順番が現実的です。一人暮らしで収納スペースが限られている場合は、そもそも大きなリュック型ではなく、コンパクトなショルダーバッグ型の防災グッズを選ぶという判断もあり得ます。

